昨日のガラスの寺子屋第5回は木村硝子店社長、木村武史さんでした。
木村硝子店は創業明治43年、湯島で100年以上続くプロ向けテーブルウエアのガラスメーカーです。
たぶん皆さんもバーやレストラン、割烹料理屋さんなどでステキなグラスを見かけていると思います。
木村硝子店には2名のデザイナーがいらっしゃるそうですが、木村社長自らもデザインされます。
図面を起こして試作をあげ、気に入らなければボツにして図面を書き直し、再び試作をあげ…これを繰り返し納得するものが出来た時はじめて完成。
「納得」とは「好きだ」と直感的に思った時で、「好きだ」と思ったものがよく売れる事が多いそうです。
さて、この「直感力」誰でも鋭いわけではありません…木村社長は「どうして好きだと直感的に思うのかわからない」とおっしゃいますが、お話の中にその審美眼&直感力の秘密がありました。
40年前に木村社長がデザインし、大ヒットしたワイングラスがあります。
たくさん売れたし、他の大手ガラスメーカーもマネしたほどのデザインなので、今見かけても当たり前のワイングラスですが、当時はこれが新しかった。
どうしてそのグラスを作ったかの物語は、当時フランスやイタリアで修業した料理人たちが帰国して日本にレストランをオープンし始めた頃でした。
外国映画やTV番組を見ていて食事のシーンになると職業柄、ついついテーブルウエアばかりを見てしまう「向こうではあんなグラスを使っているのか…あんなの作ったらきっとみんな欲しがるな!」と思い、試作を繰り返し2年がかりで納得できるデザインが出来たそうです。
そしてこれが大ヒット。
そうです、木村社長はボ~ッと映画やTVを見ていたわけではないんですね。
自然に自分に必要な情報をそこから取りだして、商品にフィードバックさせている。
つまり、今までのガラスの寺子屋でもお話が出ていた「マーケティング」していたわけです。
40年前には「マーケティング」なんて言葉、日本にはありませんでしたが、ちゃんと外にアンテナを張って体で感じ取り、モノをカタチにされていたのですね。
このマーケティング力の実力を証明するものの一つとして、日本バーテンダー協会が開催する「バーテンダー技能競技大会」があります。
こちらの大会はバーテンダーさん達がカクテルを作る大会で、グラスも選手おのおのが用意し持ち込みで、その8割が木村硝子店のグラスを持ってくるそうです。
ソムリエやバーテンダーの方々は非常に目が肥えているので、このマーケットを狙う場合は自分の目も肥やさないといけませんね。
この他にも「木勝」シリーズの誕生秘話など楽しいお話沢山でした。
今回は木村社長のおはからいで、木村硝子店のグラスでシャンパンを飲むという実技講習付きでした。
薄口のステキなフォルムのグラスに入れて飲む冷え冷えのシャンパンの美味しかった事~っ。
呑みすぎました…。
一般の私たちはバーやレストランに行かないと木村硝子店のグラスに出会えませんが、ここで耳寄り情報。
10月11日から西麻布にあるle bainのギャラリー「MITATE」にて展覧会があるそうです。
次回ガラスの寺子屋第6回は9月16日(月・敬老の日)講師はガラス作家江波冨士子さん
8月はお休みです。
お申込みは主宰井上典子さんへ⇒http://inoten.exblog.jp/