ガラス探検隊

ガラスの寺子屋第6回報告


台風で大変だった3連休の最終日、ガラスの寺子屋第6回が開催されました。

雨上がりの午後、会場で椅子など準備していると「トントンっ」と扉をノックする音が…
扉を開けて見るとそこには今回の講師、江波冨士子さんが深々と頭を下げて「本日はよろしくお願いいたします。」と立っておられました。

宜しくお願いするのはこちらなのですが、何と丁寧な方~という第一印象。

今回はガラス作家としてしっかり活動されている方からお話を聞こうという事で、私も大ファンの江波冨士子さんでした。
そして、プロジェクターとスクリーン持参してくださり作品のスライドを見ながらの講義でした。

(このスライド8か月もかかって作ってくださったそうです。)

高校生の頃に出会った陶芸家の先生との出会いから、ガラスへと素材を変えるきっかけ、独立して工房設立し、現在に至るまでをお話しいただきました。
江波さん高校生の頃、陶芸の先生に弟子入りを考えていたところ、先生から美大への選択もある事を進められ、多摩美術大学へ。

多摩美在籍中にバーティル・バリーンの作品に衝撃を受けガラスへと素材を変えていきます。

その後、富山ガラス造形研究所へ、卒業後就職した会社がすぐにつぶれてしまったので思い切ってアメリカへ渡り、チャダムグラスカンパニーに入り修行するという、折に触れ刺激を受けるたび、かなり自分の気持ちに正直に歩む道を選択されて来たようです。

スライドでは道を歩んでいく節々で影響された言葉だけのスライドもたくさん登場する構成。
それは本の中からも、直接言われたことも含めで、私もハッとさせられる言葉ばかりでした。

今の江波さんのスッキリシンプルなフォルムに影響を与えたのはこの寺子屋主催の井上さんの「かたちよ、かたち」という言葉だったようです。

この誰かに言われたり、本の中から影響を受けた言葉をちゃんと受け止めて自分の中で咀嚼し、実際の作品に反映していったことで、江波さんの作品は進化し、展覧会出品のお声がかかったり、懐石料理の菊の井からの器の注文を受けたりと活動が活発になっていきます。

この菊の井の器、「胡麻豆腐用」との注文に答えるのにも、菊の井主人から胡麻豆腐の大きさと余白の空間のお話を聞き、サンプルを10点作ったそうです。
(料理と器の空間の話は、ガラスの寺子屋第1回でも出ましたね)

この時制作したのはムリーニの技法、プレゼンで決まった器を170個制作したため、腕がかなり上がったそうです。

ちなみにこの時、色について井上さんに相談したら「胡麻豆腐ならきなりよ!」の一言に素直に従ってすんなり仕事が決まったそうです。

人の意見を尊重して作品に活かす、大事です。

そしてそれがまたまたサントリー美術館出品へとつながって行きました。
2011年に開催された「あこがれのヴェネチアン・グラス時を超え、海を越えて」は見に行った後、私もこのブログでこの展覧会を紹介しています。

ヴェネチアングラスも良かったんですけど、ヴェネチアングラスに影響を受けた現代作家コーナーの江波さんの作品「雨のち虹」に感動したからです。
http://marblepocket.com/blog/index.php?/archives/449-unknown.html

江波さんの制作はスケッチする事から始まり、パーツを何ピース作るのか計算し、材料の準備をしてなるべく無駄の無いようにしているそうです。
それは工房から出るゴミや使うエネルギーのことも考えているからです。

彼女の使っているムリーニというモザイク技法、大雑把な性格では出来ないな~と思っていたら、やっぱり丁寧で緻密な性格の方でした。

質問コーナーでも一人一人に納得するまで丁寧に答えていただき素晴らしかったです。

そして、たくさんあった影響を与えた言葉の締めくくり、ガラスをやってこられたのはパートナーの小西潮さんの「ガラスを吹いて、世界に行こう」でした。
小西さんとはアメリカ修行時代のチャダムグラスカンパニーの兄弟子妹弟子の関係だったという事。

私の見解では小西さんが早くに江波さんの才能に気が付いてサポートしている感じ…

人とのつながりを大切にし、頂いた言葉を作品に活かし、丁寧な仕事が次への活動を広げる。
ガラスで食べていくための姿勢を学びました。

次回ガラスの寺子屋は10月14日(月)体育の日、講師はサントリー美術館学芸員土田ルリ子さん
お申込みお問い合わせは井上典子さんブログから⇒http://inoten.exblog.jp/18521075/