ガラス探検隊

ガラスの寺子屋第10回報告


一昨日はガラスの寺子屋第10回でした。

早いものです、昨年の2月から開催されたガラスの寺子屋も1年がたち、10回目を迎えました。

今回はアートプロデューサーの清水敏男さんが講師。

清水さんは水戸芸術館や東京都庭園美術館などの美術館勤務とその後の海外生活を経て、海外を含めてのグローバルなアート市場を把握していらっしゃる方です。

近年はパブリックアートの分野で街にアートを入れ込む為のディレクションとプロデュースをされており、東京ミッドタウン全体のアートプロデュースを手掛けたことでも、ご存知の方が多いと思います。

講義の最初は「美術」と「アート」の概念の違いなど、スライドで解り易く解説いただきました。
「美術」と言う言葉は明治時代になって生まれた言葉で、「美術」と言うカテゴリーが出来た為に「工芸」と言うカテゴリーが構築されたこと、またここ20年の間に「アート」と言う言葉が、絵画彫刻を指して言う「美術」からもっと広い芸術を束ねる言葉として広く使われるようになってきたことなど1時間にわたってお話しいただきました。


ガラスの寺子屋の講義は3時間ですが、後半2時間は今回のスペシャル企画!

この講座受講生募集の時からお知らせいたしておりましたステキな計画がございました。

今、清水さんが手がける港区の某施設のアートワークの作品提案に、このガラスの寺子屋受講生の中から必ず1人は提案して頂けるという事で希望者はこの日、自分の作品を清水さんにプレゼンテーションすると言う企画でした。

そんなこともあり、マックス30人の受講生募集の所、36人の受講生、プレゼンテーションには29人が参戦!

来場も岡山、名古屋、金沢など、地方の作家さんも参加、技法もガラスにとどまらず陶芸、漆芸、現代アートの作家さん達がすし詰め状態の熱い場でした。

一人2分の持ち時間でプレゼンテーションして、清水さんからの質問に答えると言う方式。
そうそう、ガラスの寺子屋4回で学んだ自分のやっていることの「言語化」実技でしたよ。

後半2時間の予定が当然オーバーし、とっぷり暮れてからの終了でしたが、清水さん的には気に入った作品が思った以上にあったようで、この場ですぐには決められないので今月末にお知らせしてくださいます。

ガラスの寺子屋では講座が終わった後、おつまみとお酒持ち寄りで懇親会をしています。
今回は講師の清水さんも残って参加してくださいまして、その時聞き出した情報によりますと、どうやら彼の中では5点ほど候補にあがっているようです。

月末の発表が楽しみです。


さて、ガラスの寺子屋2年目に突入に当たり、2月はお休み。

次なる寺子屋は更にバージョンアップした内容を井上典子さんが企んでおります。

見逃さないように井上さんブログ必見
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でも告知いたします⇒
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ガラスの寺子屋第9回報告


一昨日の三連休最終日は、ガラスの寺子屋第9回でした。
今回の講師はアートギャラリー酉福(YUFUKU)店主 青山和平さん。
バイリンガルのイケメンギャラリストと言う前触れ通り、会場に現れた時も歯並びの良い爽やかな笑顔~♪期待を裏切らない登場の仕方でした。

酉福は海外に日本の作家を紹介し、世界のコレクターがお客様、7年前にロンドンのアートフェアに出展し、持って行った作品を完売させた実力派ギャラリーです。
ガラスで世界に羽ばたきたい方必見講座でした。

前置きは、「これからお話する事は、私のギャラリーと私の考えであって、一般論ではありません。」と始まりましたが、内容は世界を見てきた経験のお話でした。
日本では工芸(クラフト)とアート(美術)の区別があまりありませんが、海外ではくっきり区別されているので、「工芸」と言ってスタートしてしまうと「アート」の世界では受け入れてもらえないとの事。

やっぱりっ!私もうすうす感じておりましたが、海外では「クラフト」はなんだか地位が低いように思っていました。

と言うか最初に「日本の工芸」を「クラフト」と翻訳した人がいけないように思います。

話がレポートとそれそうなのでこの話はまたに…

世界のアートシーンでは「個展」の時代ではなく、「アートフェア」の時代であると!
世界各国で年に何回も行われる大きなアートフェアには世界中からコレクターが見に来るそうです。

しかもプライベートジェットを飛ばして…

例えば「テファフ・マーストリヒト」、2週間の会期中、毎日150機プライベートジェット機が着き、作品を見に来るアートコレクターがいらっしゃったそうです…想像を絶する別世界だわ…

また、国内の市場のお話では、お茶の世界があるので焼き物好き、器好きが多くガラスのコレクターが少なく、日本は「用の美」が好まれることも教わりました。
そして世界市場は「立体造形」を求めている事、大英博物館もヴィクトリア&アルバート美術館も「器」はコレクションしていませんと。

しかしながら、日本人にしか作れない「美」が好まれる事も教えていただきました。

作品制作には「素材」と「技術」と「自己表現」の3つが必要で、素材はもちろんですが技術はあって当たり前、その先の「自己表現」が重要と。
そういえばガラスは素材が魅力ありますし、作るのも楽しいので技術において切磋琢磨しますがそこ止まりになりがちだわね。

皆さんご注意くださいね。

さて、世界市場が求める「立体造形」における「自己表現」に求められるものは、一言「フォルム」でした。
そしてそのフォルムに対して本当に合った技法で制作しているか。

ここの部分はかなり沢山お話しいただきましたが取りまとめると、ガラスという素材だけに頼らず、その素材の特性を活かし、ガラスを造形する為の技術技法はあって当たり前、そしてそのガラス技法でしか表現できないカタチが重要という事です。

しかもそのカタチが空間を変えられるかが重要と。
そうなんです、海外は住宅事情も違いますから作品を設置する空間が日本とはかなり違いますし、プライベートジェットで来場するコレクターのご自宅は半端ない空間だそうです。

ま、想像できない世界ですが、まずは海外トップクラスのアートフェア―を見に行ってみましょうとおススメされました。
グローバルなアート市場に打って出るには、この目で見て世界を知る事、重要ですね。
この他にも世界のコレクターに好まれる大きさ、フォルム、海外のギャラリーとのお付き合いのし方などについてもご教授頂きました。

最後は、恒例の講評7名の志願者…青山さん爽やかな笑顔のまま、バッサリ…
皆さん世界のアート基準に届かずでございました…()

次回ガラスの寺子屋10回目は1月13日 講師はアートキュレーター 清水敏男さん
お申込みお問い合わせは井上典子さんブログから
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ガラスの寺子屋第8回報告


一昨日の日曜日はガラスの寺子屋第8回でした。

今回はプロの一流料理人からお話を聞こうと、
銀座並木通りの人気日本料理店「六雁」初代料理長 榎園豊治さんを講師にお迎えいたしました。

榎園さんは現在厨房に立つことはあまりなく、料理界の人材育成、リゾートホテルや有田焼のディレクションなど、その活動は多岐にわたっていらっしゃいます。

まずは料理人界のお話から、「料理人もモノ作りです」と始まりました。
料理人の方たちは早朝の仕入れから調理の時間、お店が終わる夜まで1日1516時間労働が当たり前だそうで、この人から見えている働く時間帯以外の見えない時間にどれだけ努力するか、情報収集するかが一流のプロと言われるようになるポイントだそうです。

そしてこれはガラスの作家にも言える事、24時間ガラスのこと考えていないといけないのですっ!

料理人の中には、B級A級S級とあり、このS級のスーパーシェフと呼ばれている方々が求める器についてもお話しいただきました。
たとえがパリコレのスーパーモデルと東京カワイイコレクションのモデルの違いで分かりやすかったです。

東京カワイイコレクションのモデルさん達はお客に愛想を振りまいていますが、パリコレのスーパーモデルたちは無表情、そして圧倒的な存在感があるもののあくまで主役は服である。

愛想を振りまくと、モデルが主役なのか服が主役なのかわからなくなる。

そう、つまり愛想を振りまく器ではなく、シルエットと質感が重要で主役は料理です。

スーパーシェフたちは什器をキャンバスだと考えていて、「絵を描くのは俺だ!」と思っているので、器は額縁付のキャンバスであってほしいと。

が、しかし世界観があり、見ただけで誰の器かわかる事も要求されました。

ぐは~…一流と互角に勝負するにはホントに真剣勝負ですな。


榎園さんは有田焼の器のディレクションもされています。

有田焼と言うと手書き絵付けの凄い飾り皿を想像される方が多いとは思いますが、なんと絵付けをやめ、シルエットで勝負した器をお持ちいただき見せてくださいました。

ジャパンブランドというフランスでの見本市で絵付けの有田焼を出品していたころは、だれも見向きもしなかったのに、絵付けをやめた有田焼はミシュラン星付のシェフたちがたくさん見に来て星の数は43スターだったそうです。

そのほかにも、器の使い手はいろいろなので誰に売りたいのか、ターゲットを明確にするようにと。
家庭の主婦なのか、料理人なのか?

料理人の中でもB級からS級までいることも解りましたし、自分の作る器は誰のためなのか細分化して考えないといけませんね。

これは、ガラスの寺子屋第2回で出てきたマーケティングですね。

また、自分が何者か、どういう存在か、何を大切にしているのかを伝えるのに、自分自身のブランディングが必要で、どう見せるのかのプレゼンテーション力が必要と。
ほらほら、これもガラスの寺子屋第4回で教わった「言語化」ですよ。


そして最後に作品講評していただきました。

大方はバッサリ切られましたが、何と今回は2人褒められました~。

回数重ねて学んだせいか、たまたまなのかわかりませんが、なんか光が見えてきた気がいたしました。

講評の中で教わったのは食欲をそそらない色と言うのがあるという事、理論的にご説明頂きました。

ガラスで器を目指す方はここ注意ですね。

何色がそうなのかは今回の受講生のみが知るところですよん。

次回は1223(/天皇誕生日) 講師は酉福店主 青山和平さん
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ガラスの寺子屋第7回報告


今回は一般の方でもご存知な美術館「サントリー美術館」の学芸員土田ルリ子さんの講義でした。
サントリー美術館は1961年に開館、2007年には赤坂から六本木ミッドタウンに移転、2011年には開館50周年も迎えました。

親会社がサントリーというお酒のメーカなだけに酒器のコレクションが多く、ガラスのコレクションにも積極的で、所蔵品が多いので年に1回はガラスの展覧会を開催していますね。

学芸員として、展覧会の企画段階の段取りから展示の工夫に至るまでを細部に至るまでお話しいただきました。

学芸員というと、学者肌の気難しい人達が美術品の分析を踏まえて堅苦しく企画していくのかと思っておりましたが、土田さんの場合は「こうなったらいいな~こんな展覧会にしたいな~♪」という「ドリームリスト」を作り、そこから企画書を作るそうです。
なんだか夢見る乙女みたいに楽しそう。

そして、外部から所蔵品をお借りするのもアポを取って必ずお願いに上がるのだそうです。
昨今、簡単にメールで済ますことの多い世の中ですが、フェイスtoフェイスのコミュニケーションが大切で「最後は人だなと思います。」とのこと。

合ってお話しているうちに、まだどこにも貸し出していないもっと企画に合っている所蔵品を出していただける事もあるのだそうです。

土田さんは展示にも手を抜きません。
展示のガラスケースのガラスのつなぎ目と、中の展示台のつなぎ目と、キャプションがかかれたカードの線が重なってうっとうしくないように配置し、微調整に次ぐ微調整を大切にするというお話。

見る立場からそんな事気にしていなかったけど(それだけ気を使われていたので今まで気にならなかったというべきか?)今度サントリー美術館に行ったらそこのところも気にして見てみます。

おおよそ展覧会の企画は2年前に立てて準備しますが、開催1か月前は体力もいるし、神経も使う、ほったらかしてやめたくなることもあるのだけれど、忍耐力を捨てないように頑張るそうで、そうしているうちに展示段階になると1つ1つの作品に愛情を感じるようになってきて、「この子の一番いい所を見せよう」と、展示の角度もじっくり検討して並べ、親ばかモードになるそうです。

土田さんのモットーは、「愛と、情熱と、愉快。」だそうで、作品への愛とこの仕事を情熱持ってやりたいが、情熱的すぎるとうっとおしいので愉快を忘れないようにするのだそうです。
このお仕事がお好きで楽しんでいらっしゃるご様子が伝わってきました。

展示は年代をおって展示しますが、必ず現代へつなげるように考えていて、しかしながら変にストーリに当てはめず見る人にゆだね、自由に見てもらえるように、押しつけがましくならないようにしていますので、「押しつけがましかったら言ってください、以後気をつけます。」と。
ちょうど土田さんが企画した「Drinking Glass 酒器のある情景」が11月10日まで開催中です。

こちらの展示では現代日本人ガラス作家6名の作品が並んでいます。

現代作家の方たちへのアドバイスとしては、「制作に迷いが出てきたとき、古い歴史的な器とか見てみると自分の作品が違って見えてくる。外を見ないとガチガチになりますから。」と、またまた今までの寺小屋講師の方々と同じ、いろいろ見ることをおすすめされました。

Drinking Glass 酒器のある情景」の会場、入り口入った所にウェルカムボードがあり、展覧会が終わるとこれ等の物は捨てるのだそうですが、今回の出来があまりにも良いので、捨てたくないのでどうしようか考え中とか。
私はまだ見に行っていませんのでこれから、展示作品以外にも見どころ満載の展覧会だわ。

次回第8回は11月30日(土)銀座並木通りの人気日本料理店「六雁」初代料理長 榎園豊治さん
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ガラスの寺子屋第6回報告


台風で大変だった3連休の最終日、ガラスの寺子屋第6回が開催されました。

雨上がりの午後、会場で椅子など準備していると「トントンっ」と扉をノックする音が…
扉を開けて見るとそこには今回の講師、江波冨士子さんが深々と頭を下げて「本日はよろしくお願いいたします。」と立っておられました。

宜しくお願いするのはこちらなのですが、何と丁寧な方~という第一印象。

今回はガラス作家としてしっかり活動されている方からお話を聞こうという事で、私も大ファンの江波冨士子さんでした。
そして、プロジェクターとスクリーン持参してくださり作品のスライドを見ながらの講義でした。

(このスライド8か月もかかって作ってくださったそうです。)

高校生の頃に出会った陶芸家の先生との出会いから、ガラスへと素材を変えるきっかけ、独立して工房設立し、現在に至るまでをお話しいただきました。
江波さん高校生の頃、陶芸の先生に弟子入りを考えていたところ、先生から美大への選択もある事を進められ、多摩美術大学へ。

多摩美在籍中にバーティル・バリーンの作品に衝撃を受けガラスへと素材を変えていきます。

その後、富山ガラス造形研究所へ、卒業後就職した会社がすぐにつぶれてしまったので思い切ってアメリカへ渡り、チャダムグラスカンパニーに入り修行するという、折に触れ刺激を受けるたび、かなり自分の気持ちに正直に歩む道を選択されて来たようです。

スライドでは道を歩んでいく節々で影響された言葉だけのスライドもたくさん登場する構成。
それは本の中からも、直接言われたことも含めで、私もハッとさせられる言葉ばかりでした。

今の江波さんのスッキリシンプルなフォルムに影響を与えたのはこの寺子屋主催の井上さんの「かたちよ、かたち」という言葉だったようです。

この誰かに言われたり、本の中から影響を受けた言葉をちゃんと受け止めて自分の中で咀嚼し、実際の作品に反映していったことで、江波さんの作品は進化し、展覧会出品のお声がかかったり、懐石料理の菊の井からの器の注文を受けたりと活動が活発になっていきます。

この菊の井の器、「胡麻豆腐用」との注文に答えるのにも、菊の井主人から胡麻豆腐の大きさと余白の空間のお話を聞き、サンプルを10点作ったそうです。
(料理と器の空間の話は、ガラスの寺子屋第1回でも出ましたね)

この時制作したのはムリーニの技法、プレゼンで決まった器を170個制作したため、腕がかなり上がったそうです。

ちなみにこの時、色について井上さんに相談したら「胡麻豆腐ならきなりよ!」の一言に素直に従ってすんなり仕事が決まったそうです。

人の意見を尊重して作品に活かす、大事です。

そしてそれがまたまたサントリー美術館出品へとつながって行きました。
2011年に開催された「あこがれのヴェネチアン・グラス時を超え、海を越えて」は見に行った後、私もこのブログでこの展覧会を紹介しています。

ヴェネチアングラスも良かったんですけど、ヴェネチアングラスに影響を受けた現代作家コーナーの江波さんの作品「雨のち虹」に感動したからです。
http://marblepocket.com/blog/index.php?/archives/449-unknown.html

江波さんの制作はスケッチする事から始まり、パーツを何ピース作るのか計算し、材料の準備をしてなるべく無駄の無いようにしているそうです。
それは工房から出るゴミや使うエネルギーのことも考えているからです。

彼女の使っているムリーニというモザイク技法、大雑把な性格では出来ないな~と思っていたら、やっぱり丁寧で緻密な性格の方でした。

質問コーナーでも一人一人に納得するまで丁寧に答えていただき素晴らしかったです。

そして、たくさんあった影響を与えた言葉の締めくくり、ガラスをやってこられたのはパートナーの小西潮さんの「ガラスを吹いて、世界に行こう」でした。
小西さんとはアメリカ修行時代のチャダムグラスカンパニーの兄弟子妹弟子の関係だったという事。

私の見解では小西さんが早くに江波さんの才能に気が付いてサポートしている感じ…

人とのつながりを大切にし、頂いた言葉を作品に活かし、丁寧な仕事が次への活動を広げる。
ガラスで食べていくための姿勢を学びました。

次回ガラスの寺子屋は10月14日(月)体育の日、講師はサントリー美術館学芸員土田ルリ子さん
お申込みお問い合わせは井上典子さんブログから⇒http://inoten.exblog.jp/18521075/

ガラスの寺子屋第5回報告

昨日のガラスの寺子屋第5回は木村硝子店社長、木村武史さんでした。
木村硝子店は創業明治43年、湯島で100年以上続くプロ向けテーブルウエアのガラスメーカーです。

たぶん皆さんもバーやレストラン、割烹料理屋さんなどでステキなグラスを見かけていると思います。

木村硝子店には2名のデザイナーがいらっしゃるそうですが、木村社長自らもデザインされます。
図面を起こして試作をあげ、気に入らなければボツにして図面を書き直し、再び試作をあげ…これを繰り返し納得するものが出来た時はじめて完成。

「納得」とは「好きだ」と直感的に思った時で、「好きだ」と思ったものがよく売れる事が多いそうです。

さて、この「直感力」誰でも鋭いわけではありません…木村社長は「どうして好きだと直感的に思うのかわからない」とおっしゃいますが、お話の中にその審美眼&直感力の秘密がありました。

40年前に木村社長がデザインし、大ヒットしたワイングラスがあります。
たくさん売れたし、他の大手ガラスメーカーもマネしたほどのデザインなので、今見かけても当たり前のワイングラスですが、当時はこれが新しかった。

どうしてそのグラスを作ったかの物語は、当時フランスやイタリアで修業した料理人たちが帰国して日本にレストランをオープンし始めた頃でした。

外国映画やTV番組を見ていて食事のシーンになると職業柄、ついついテーブルウエアばかりを見てしまう「向こうではあんなグラスを使っているのか…あんなの作ったらきっとみんな欲しがるな!」と思い、試作を繰り返し2年がかりで納得できるデザインが出来たそうです。

そしてこれが大ヒット。

そうです、木村社長はボ~ッと映画やTVを見ていたわけではないんですね。

自然に自分に必要な情報をそこから取りだして、商品にフィードバックさせている。

つまり、今までのガラスの寺子屋でもお話が出ていた「マーケティング」していたわけです。

40年前には「マーケティング」なんて言葉、日本にはありませんでしたが、ちゃんと外にアンテナを張って体で感じ取り、モノをカタチにされていたのですね。

このマーケティング力の実力を証明するものの一つとして、日本バーテンダー協会が開催する「バーテンダー技能競技大会」があります。

こちらの大会はバーテンダーさん達がカクテルを作る大会で、グラスも選手おのおのが用意し持ち込みで、その8割が木村硝子店のグラスを持ってくるそうです。

ソムリエやバーテンダーの方々は非常に目が肥えているので、このマーケットを狙う場合は自分の目も肥やさないといけませんね。

この他にも「木勝」シリーズの誕生秘話など楽しいお話沢山でした。

今回は木村社長のおはからいで、木村硝子店のグラスでシャンパンを飲むという実技講習付きでした。
薄口のステキなフォルムのグラスに入れて飲む冷え冷えのシャンパンの美味しかった事~っ。
呑みすぎました…。

一般の私たちはバーやレストランに行かないと木村硝子店のグラスに出会えませんが、ここで耳寄り情報。
10
11日から西麻布にあるle bainのギャラリー「MITATE」にて展覧会があるそうです。

次回ガラスの寺子屋第6回は9月16日(月・敬老の日)講師はガラス作家江波冨士子さん
8月はお休みです。

お申込みは主宰井上典子さんへ⇒http://inoten.exblog.jp/

ガラスの寺子屋第4回報告

昨日のガラスの寺子屋4回目は、現代アートの老舗ギャラリー東京画廊オーナー山本豊津さんでした。
日頃お会いした時も、いつもお話が楽しくて魅力的な方、今回の講義も引き込まれるように聞き入ってしまいました。

前回3回までは器としてのガラスが基本にある講義でしたが、今回はアートとしてのガラスです。
まずは、日本及び世界のアートの流れと東京画廊が先代のお父様の時代に現代アートを扱うようになった経緯などをお話し下さり、戦後の高度成長期の製造業の時代の流れとともにアートの変遷がある事をお話しいただきました。

そして、美術品の価値=価格について。
美術は情報が価格に反映されるもの、例えばピカソは皆さん知っていますね、作品の値段も20億円します。

それは「言語化」された情報を皆が理解して価値を知っているから。

言語化されていない情報は理解されないので価値がわからない…値段は最も大きな言語であるのです。

つまり、自分の作ったものの価値を「言語化」して説明できないとマーケットに出ていかれないとの事。

やっぱりなんとなく作っていたんではだめなんですね。

グローバルマーケットに於いて日本の美術はコンセプトに弱いので、もっと他の民族との違い、日本人の中で持っている感性を言語化し、そして言語化できない身体的なものとして作品があるべきと。
ちなみにこの「言語化」ですが、言語化が必要ないものは、人がすでに作っているもので、人が作ってないものを作る時に「言語化」が必要です。

また、作品の仕上がりは自分の目で判断して完成としていますので、みなさんの目が肥えていないとだめですよ。
いろいろなものを見て目を肥やさないと自分の作品の向上は無いですよとのご指導。

とにかくガラスという素材を鍛えた目で見直してみることが必要だと。

今回も希望者10名の作品講評をして頂き、楽しいお話を交えながらひとりひとり丁寧に、こうするともっと良くなる方法までご指導いただきました。
皆さん作品を出す時、「言語化」を試みられていましたが、まだまだ鍛練が必要そうでした。

次回は715(月・海の日) 講師は木村硝子店社長 木村武史さん
詳細・お申し込みは井上典子さんブログからどうぞ⇒http://inoten.exblog.jp/19885486/


 

ガラスの寺子屋第3回報告

昨日は「ガラスの寺子屋」第3回でした。
講師は華道家の上野雄次さん。
15時スタートの講座なのに会場にいらっしゃったのは午前10時、車に満載の花材と共に登場、しかも作品を積載したこんな車で…

早々に会場に花を活けてくださり、空間がすでに上野さんのオーラで包まれます。

この講座、ガラスでどうやって食べていくかを学ぶ講座なんですが、講義ののっけから「花で感動させることではなかなか食えない。自分が本当にやりたい事はなかなか評価されにくい。どんなものが売れるの解らない…僕が食えてないから。」とのご発言。
まあ、2回までの講師は使う側、売る側でしたので今回は使う側と言っても同じ作り手でもあるので少し視点が違いました。

今回は講評を希望されている受講者の皆さんの作品を最初からテーブルに出して、それを例にとりながら、質問や意見を受けながらの進行。
まずは華道における造形のお話で、「花活けにとって花瓶も作品の一部、全体で一つの造形を成すのでそこが駄目だと命取り。」「空間を支配することも考えるので場所により花器は考える。」と、花器は責任重大なわけですね。
そして植物の造形を見て人は何に対して感じているかを紐解いてくださいました。
それは「重力とのせめぎ合い」に対してで、一本の木が大きく広がる枝葉を支えるすごさ、活けた花の不安定ぎりぎりの緊張感に感動するのだと…

爪先立ちでバレエも例にとり、重力とせめぎ合って踊ってくださいました。

「一般の人には不安定なものは怖いのでは?」との質問には、「誰の何処に石を投げるのかという事。」と、つまりは前回の柳田さんのマーケティングと同じことで、一般の方がた向けのものなのか、華道家向けのものなのか考えて制作しなければいけないという事ですね。
講義は作品の講評を交えながら、どんな形が活けやすいのか、透明なガラスに活ける場合の活け方などお話しいただき、基本花がまっすぐ立てばよいので、誰でも活けられる理想的な形は一輪挿しであるとのこと。

その他にも技術技巧に裏付けされたシンプルなものに感動することや、華道家として活けにくそうな器だと「やってやるぞっ!」と受けて立ちたくなるお話などなど…
最後は作品を持ち寄った希望者何人かの器に実際に花を活ける実演へ。

写真は五十嵐智一さんの掛け花に活けたところ。
また、「重力との呼応」を活ける場面では会場全員ドキドキハラハラの場面もあり、最初から最後までテンション高いまんまなんと1時間40分オーバーの講座でした。

ガラスの寺子屋次回は6月30日(日) 講師は現代アートのギャラリー東京画廊オーナー 山本豊津さん
お申込みお問い合わせは、井上さんブログからどうぞ

ガラスの寺子屋第2回報告

昨日は「ガラスの寺子屋」第2回でした。
今回の講師は「UTSUWA GALLERY 千鳥」オーナーの柳田栄萬さん。
千鳥では素朴で温かみのある器、料理がおいしく見える器、使い込むほどに美しくなる器を扱われています。
つまり、食卓に上る食器としての器の観点からのご講義頂きました。

きっちりレジュメをご用意いただき、内容は3部に分かれておりました。
1、ガラス作家として生きて行くためのマーケティング戦略
2、うつわやの私はこんなガラスが売りたいのです
3、ガラス作家として生きていくための営業力

1部の「ガラス作家として生きていくためのマーケティング戦略」では、
市場の把握、ターゲットの決定、「作家モノのガラス」の意味の再考をし、自分が作るべきものは何かを考えるについて解り易くお話しいただきました。
柳田さん自身、器のお店を始めてから自分が好きなドストライクの商品だけでやっていて、上手くいかなくなり、お姉さまの一言に「マーケティング」が重要であることに気がついた苦い経験からのお話でした。
私は、もともと広告業界におりましたので、「マーケティング」について理解しておりましたが、「これを作家活動にも当てはめられるのかっ!」と膝を打つ思いでした。
作家の方には、「ありのままの私を好きになってほしい」という考えの方が多いのですが、要は「相手に好かれる努力をしましょう」という内容でした。

2部の「うつわやの私はこんなガラスが売りたいのです」は、
需要の高いアイテム、ほどほどに需要があるアイテム、ヒットの可能性のあるアイテムに分けて、
サイズや容量など細かく教えていただきました。
教えていただいたアイテムで、今回参加した作家さん達でそれぞれ作品を制作し、グループ展を開催したら面白いかもっ!と思いました。

3部の「ガラス作家として生きていくための営業力」では、
お店との付き合い方、個展の売り上げののばし方、作家在廊日を最大限に生かすなど、
ただ作品を制作しているだけでは売れませんよという事でした。
しかしながら、営業力と言ってもがつがつしたものではなく、一生懸命な姿勢の人柄に扱う店も、買うお客様もファンになるようです。

この寺子屋主催の井上さんからも、
「ガラスの人達って、他を見て回るといっても、ガラスしか見てないのよねっ!
他の素材も見なきゃだめなのよっ!」
と、厳しいお叱り…
柳田さんの市場の把握のお話の中にも
「ガラスの器にとって世の中すべての器が競合。
量産品のガラスから陶磁器までよく見る事。」と。

「作家性を大事にしつつ、売れるものを作る」ためのかなりためになったお話でした。

今回も、講評会をたっぷり1時間以上して頂き、
「コップなどは単体で使う事もあるけれど、食事の時の器は他のものとのなじみの良さが重要」と、
第1回のフードスタイリスト石森いづみさんの「調和」のお話と共通点もあり、
前回同様バッサリ切られて血しぶきでした。
負けずに皆さん頑張って良いもの制作してください。

次回は4/29(月・祭) 花道家 上野雄次さん
お申込みお問い合わせは、井上さんブログからどうぞ

ガラスの寺子屋第1回報告その3

ガラスの寺子屋報告の続きです。
ガラスで器を作る場合、飾る器なのか、料理を盛る器なのかの分かれ道があり、料理を盛る器の道を選んだとしましょう。
そこには更に「日常の器」と「非日常の器」というスタンスも考えねばならないと石森さんはおっしゃいます。
つまり、家庭に於いて使われる「日常の器」、レストランやホテルなどで使われる「非日常の器」です。
それぞれに於いて目指す形状、大きさなど異なります。
例えば個性的な主張の強いものも非日常であれば許容しうること。
しかしながらそれでもガラスだけで自立することはなく、他の素材の器との調和であること。
やっぱりいつもガラスだけではなく、周りを考えながら制作しないといけないわけです。
写真は石森さんがお持ちくださったガラスの器たち。
奥は周りと調和しやすいもの、手前の四角いのは素麺を特殊な盛り付けした時の器。
下の写真は参加者が持参した作品群。

料理を盛る器には、料理を盛った残りの余白部分の重要性、そして器を取り巻く空間の分量のお話など、3時間以上お話しいただきました。
あ、あと一つ印象的なお言葉があります「空間の恐怖」です。
欧米の人達は建築などでも空間が開いていることに恐怖を覚え、隙間なく装飾を施してしまうそうで、唯一日本人は何もない壁などの空間に恐怖感を持たないのだそう。
ちょっと禅の心に通じるのでしょうかね…
つまり、ガラスにはいろいろテクニックがありますね、レースガラスやムッリーニなどガラスに色や模様をつけることが出来ますが、要はやり過ぎるなという事のようです。
ほかにもたくさん学ばせて頂きました寺子屋第1回、次回は3月31日。

詳細、お申し込みは井上さんのブログでどうぞ。⇒http://inoten.exblog.jp/d2013-02-12/